こんな疑問にお答えします。
2023年3月国家公務員を退職。実際に退職手当を受け取った経験も交えて、解説します。
「国家公務員を退職したい!」と思っても、退職後の生活費が心配ですよね。
公務員は失業手当がありませんので、当座の生活費として最も頼りになるのは「退職手当」です。
だけど、退職手当がいくら支払われるのかわからないままだと、当てにしていいかわからず、不安ですよね。
私・まゆりんごも、退職の1年前に退職の意思を固めてから、退職手当の計算シミュレーションを行い、「私の勤続年数・退職理由からすると、おおよそこれぐらいの金額なんだな」と想定した上で退職することができました。
2023年3月に国家公務員を退職後、退職手当を受け取った実体験も交えて、国家公務員の退職手当について解説します。
「細かい説明はいいので、すぐに計算シミュレーションしたい!」という方は、いきなり「退職手当の計算シミュレーションをしよう【勤続年数15年・自己都合退職の計算例あり】」から読んでいただければ大丈夫です!
国家公務員の退職手当の計算方法
退職手当の計算の根拠
国家公務員の退職手当は、「国家公務員退職手当法」に基づき支払われます。
この「国家公務員退職手当法」の中で、退職手当の計算方法が定義されていますが、法律なので読み解くのがとても難しいです。
人事院のホームページに、「退職手当制度の概要」について、少しわかりやすく記載しているページがありましたので、本記事では、法律を参照しつつ、人事院のページを参考に計算します。
退職手当の計算式
退職手当の額は、以下の計算式で計算します。
退職手当 = 基本額 + 調整額
退職手当は「基本額」と「調整額」で構成されており、別々に計算します。
退職手当の「基本額」とは
「基本額」は、以下の計算式で計算します。
基本額 = 退職日の(a)俸給月額 × (b)退職理由別・勤続期間別支給割合
基本額の計算における「勤続年数」とは
「退職理由別・勤続期間別支給割合」の表の左端に「勤続年数」があり、「勤続年数」によって、表中のどの数字を使うかが変わります。
「勤続年数≒在職年数」ですが、在職中の休職・休業期間(育児休業や私病による休職期間)は控除するルールになっています。
退職手当の「調整額」とは
「調整額」は、在職期間のうち、以下の表に該当する俸給だった月数を高い順に60月とり、各月ごとに調整月額を掛け算して合計した額です。(↓計算例を参照)
区分 | 説明 | 調整月額 |
区分1 | 指定職(6号俸以上)、これに相当する職員 | 95,400円 |
区分2 | 指定職(5号俸以下)、これに相当する職員 | 78,750円 |
区分3 | 行(一)10級、これに相当する職員 | 70,400円 |
区分4 | 行(一) 9級、これに相当する職員 | 65,000円 |
区分5 | 行(一) 8級、これに相当する職員 | 59,550円 |
区分6 | 行(一) 7級、これに相当する職員 | 54,150円 |
区分7 | 行(一) 6級、これに相当する職員 | 43,350円 |
区分8 | 行(一) 5級、これに相当する職員 | 32,500円 |
区分9 | 行(一) 4級、これに相当する職員 | 27,100円 |
区分10 | 行(一) 3級、これに相当する職員 | 21,700円 |
区分11 | その他の職員(非常勤職員を含む。) | 0円 |
ほとんどの人が、在職期間の終わりに行くほど高い俸給だと思いますので、例えば以下のような在職期間の場合
- 4級に昇格してからの期間・・・36月
- 3級に昇格してからの期間・・・48月
- 2級以下の期間・・・72月
調整月額が高いところから60月なので、
- 4級の期間は36月全部
- 3級の期間は60月-36月(4級の期間)=24月を採用
→ 27,100×36月+21,700×24月=1,496,400円(*自己都合退職の場合はその半額)
なお、「自己都合」退職の場合は、勤続9年以下の場合は調整額の支給はなく、勤続10年以上24年以下の場合は調整額が半額となります。
退職手当の計算シミュレーションをしよう【勤続年数15年・自己都合退職の計算例あり】
手順①退職手当の計算に必要な数字を確認する
まずは、計算に必要な数字が、自分の場合いくつなのか、確認しましょう。
上記の数字の確認方法を、ひとつずつ解説しますね!
1.退職日の俸給月額
「基本額」の計算に必要な数字です。
「退職日の俸給月額」は、退職した時点のいわゆる基本給のことです。
退職月の給与明細の基本給の額を確認しましょう。
2.勤続年数
「基本額」の計算に必要な「退職理由別・勤続期間別支給割合」を出すために数字です。
勤続年数は、ほぼ在職年数とイコールです。
ただし、上述の「勤続期間から控除する休職・休業期間」に該当するような休業期間がある場合は、その月数を控除します。
例えば、「育児休業」期間がある場合の例を考えてみましょう。
3.退職理由別・勤続期間別支給割合
「基本額」の計算に必要な数字です。
先に計算した「勤続年数」を、「退職理由別・勤続期間別支給割合」一覧表の左側の「自己都合」の欄にあてはめて、該当する数値(支給割合)を確認します。
4.各俸給ごとの期間
「調整額」の計算に必要な数字です。
上述の「調整額区分表」の区分ごとに、期間を計算します。
また、この時の期間も、「勤続期間から控除する休職・休業期間」に該当するような休業期間がある場合は、その月数を控除します。
手順②退職手当の計算式にあてはめる
手順①で用意した数字を、計算式にあてはめましょう。
手順①で「例」として計算した数字を使って計算してみます。
退職手当の金額の計算シミュレーションができました!(ぱちぱち)
【実例】まゆりんごの場合の退職手当の計算シミュレーション結果
実は、「計算シミュレーション」で計算した例は、まゆりんごの場合の数字を使いました。
なので、まゆりんごの場合(勤続15年・自己都合退職)で、退職手当がいくらなのかシミュレーションした結果です。
実際に、退職手当が振り込まれた結果は・・・
実際の退職手当の金額は、計算シミュレーション結果とぴったり一致しました!
【紹介】退職金の計算サイト*ただし数字は自分で用意する必要あり
国家公務員の退職手当の金額を計算シミュレーションできるサイトもあります。
ただし、計算に使用する数字など(「退職日の俸給月額」、「勤続年数」、「各俸給ごとの期間」)は、当サイトと同じ計算方式で、あらかじめ用意しておく必要があります。
「退職理由別・勤続期間別支給割合」を用意しなくてもよい(自動で設定してくれる)ので、少し楽ですね。
ちなみに、このサイトでもまゆりんごの場合で計算シミュレーションしてみたところ、全く同じ退職手当額になりましたので、内部的には同じ計算をしているようですね。
支払われるまでの流れと、支払われたら気を付けること
退職手当が支給されるまでの流れ【まゆりんごの場合】
まゆりんごは、2023年3月末日付けで退職!
退職手当が支払われるまでの流れはこんな感じでした。
2月下旬:人事異動の内示があり、まゆりんごの退職も周りが知るところとなる
↓
3月上旬:人事から<退職手当関係の書類*後述①>が渡され、記入を求められる
↓
4月上旬:<退職手当額の明細等*後述②>が自宅に届く
↓
4月26日:退職手当が振り込まれる
①人事に提出した退職手当関係の書類
書類は所定の様式があり、人事から渡されました。
提出したのは以下の書類です。
2の「退職所得の需給に関する申告書 兼 退職所得申告書」の中で、「住所」「氏名」「勤続期間」のみ記入するよう、人事に指定されました。
それ以外の箇所は人事で記入の上、税務署に提出されたのだと思います。
この「退職所得の需給に関する申告書 兼 退職所得申告書」を税務署に提出することで、退職手当に対する所得税の非課税(上限額以上は課税)という対応が受けられるわけですね。
②退職手当額の明細等の関係書類(退職後に送付されたもの)
退職後に届いた、退職手当に関する書類は以下のようなものでした。
1の「退職手当額の通知書」には、シンプルに、退職手当の額だけが書いてありました。
2の「退職所得の源泉徴収票・特別徴収票」は、所得税の課税に関する書類です。
気を付けること①控除されているものを確認
所得税
退職手当も所得ですので、通常は所得税が課税されますが、勤続年数から計算した上限額までは非課税となります。
<勤続年数20年以下>
40万円 × 勤続年数(80万円に満たない場合には、80万円)
<勤続年数20年超>
800万円 + 70万円 × (勤続年数 – 20年)
まゆりんごの場合は、勤続15年なので、
40万円×15年=600万円まで非課税となります。
この結果、受け取った退職手当は全額非課税でした!
住民税
住民税は、6月~5月が区切りとなっています。
原則として、退職日が1月1日〜5月31日である場合、5月分までの住民税を一括徴収(最終月の賃金や退職手当から控除)することが、給与支払者に義務付けられているようです。
このため、3月末で退職したまゆりんごの場合、退職手当から4・5月分の住民税が控除されていました。
・・・ということは、6月以降の住民税を自分で支払えばよいのだなっと。
気を付けること②退職後の住民税に注意
住民税の納税方法は、「特別徴収」「普通徴収」の2種類があります。
- 特別徴収・・・給与支払者が納税者の給与から天引きして市町村に住民税を納付する方式
- 普通徴収・・・納税者が自ら市町村に住民税を納付する方式
公務員時代は「特別徴収」なので、住民税を納付しているという認識があまりないものです。
退職後、給与所得者ではなくなった場合(フリーランス等)は「普通徴収」となり、住民税の納付書が自宅に届きます。
住民税って、公務員時代は毎月天引きされていたからあまり気にしてなかったけど、意外と高額でびっくり!!
フリーランス1年目だと稼ぎがまだまだなので、退職手当で支払うしかない・・・
前年の収入に対する課税なので、今年収入が少なくても払うしかないし・・・(涙)
まとめ:退職する前に、退職手当の計算シミュレーションをして、退職後の計画を立てよう!
国家公務員を辞める前に計算しておきたい「退職手当」について、計算方法や計算シミュレーション結果を紹介しました。
退職後の人生に重要なのは、お金だけじゃないけれど・・・
やっぱりお金は、「生活の安定」も「心の安定」も与えてくれる存在です。
そして、退職後のお金として最も頼りになるのが「退職手当」。
退職したい国家公務員の方も、今すぐの退職は考えていない国家公務員の方も、ぜひ計算シミュレーションをしてみてください。
「自己都合退職」にせよ、「定年退職」にせよ、いずれは退職する日がやってきます。退職手当の計算シミュレーションをすることで、みなさんの退職後の生活設計のシミュレーションにもつながったらうれしいです。