自己都合退職の国家公務員の退職手当っていくら?【計算シミュレーションあり】

国家公務員の退職

「国家公務員を辞めたいけど、退職後の生活費が心配。退職手当(退職金)っていくらもらえるんだろう。」

こんな疑問にお答えします。

本記事の内容
  • 国家公務員の退職手当の計算方法(自己都合退職)
  • 国家公務員の退職手当の計算シミュレーション(自己都合退職)
  • 支払われるまでの流れと、支払われたら気を付けること3つ
この記事を書いた人
まゆりんご

公務員を辞めた人 ● 国家公務員として15年勤務後、退職 ● 個人事業主になってみた ● フルタイム公務員と育児の両立に疲れ果てた→これからはゆるく生きたいアラフォー ● 育児の片手間で在宅で仕事をして、公務員時代と同じぐらい稼げるか挑戦中

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2023年3月国家公務員を退職。実際に退職手当を受け取った経験も交えて、解説します。

「国家公務員を退職したい!」と思っても、退職後の生活費が心配ですよね。

公務員は失業手当がありませんので、当座の生活費として最も頼りになるのは「退職手当」です。

だけど、退職手当がいくら支払われるのかわからないままだと、当てにしていいかわからず、不安ですよね。

私・まゆりんごも、退職の1年前に退職の意思を固めてから、退職手当の計算シミュレーションを行い、「私の勤続年数・退職理由からすると、おおよそこれぐらいの金額なんだな」と想定した上で退職することができました。

2023年3月に国家公務員を退職後、退職手当を受け取った実体験も交えて、国家公務員の退職手当について解説します。

まゆりんご
まゆりんご

「細かい説明はいいので、すぐに計算シミュレーションしたい!」という方は、いきなり「退職手当の計算シミュレーションをしよう【勤続年数15年・自己都合退職の計算例あり】」から読んでいただければ大丈夫です!

国家公務員の退職手当の計算方法

退職手当の計算の根拠

国家公務員の退職手当は、「国家公務員退職手当法」に基づき支払われます。

この「国家公務員退職手当法」の中で、退職手当の計算方法が定義されていますが、法律なので読み解くのがとても難しいです。

人事院のホームページに、「退職手当制度の概要」について、少しわかりやすく記載しているページがありましたので、本記事では、法律を参照しつつ、人事院のページを参考に計算します。

退職手当の計算式

退職手当の額は、以下の計算式で計算します。

退職手当 = 基本額 + 調整額

退職手当は「基本額」と「調整額」で構成されており、別々に計算します。

退職手当の「基本額」とは

「基本額」は、以下の計算式で計算します。

基本額 = 退職日の(a)俸給月額 × (b)退職理由別・勤続期間別支給割合

(a)俸給月額

行政職俸給表の月額。いわゆる「基本給」のこと。地域手当、扶養手当、俸給の特別調整額等(管理職手当など)の諸手当は含めない。

(b)退職理由別・勤続期間別支給割合

「退職理由」と「勤続期間」で決定する数字。

「退職理由別・勤続期間別支給割合」一覧(人事院ホームページより引用)

基本額の計算における「勤続年数」とは

退職理由別・勤続期間別支給割合」の表の左端に「勤続年数」があり、「勤続年数」によって、表中のどの数字を使うかが変わります。

「勤続年数≒在職年数」ですが、在職中の休職・休業期間(育児休業や私病による休職期間)は控除するルールになっています。

勤続期間から控除する休職・休業期間(代表的なもの)

*下記の期間は、2分の1の期間を「勤続年数」から控除する

  • 私傷病による休職の期間
  • 懲戒処分としての停職の期間
  • 育児休業の期間(ただし、子が1歳に達した日の属する月までの期間は3分の1の期間に換算する。)

退職手当の「調整額」とは

「調整額」は、在職期間のうち、以下の表に該当する俸給だった月数を高い順に60月とり、各月ごとに調整月額を掛け算して合計した額です。(↓計算例を参照

区分説明調整月額
区分1指定職(6号俸以上)、これに相当する職員95,400円
区分2指定職(5号俸以下)、これに相当する職員78,750円
区分3行(一)10級、これに相当する職員70,400円
区分4行(一) 9級、これに相当する職員65,000円
区分5行(一) 8級、これに相当する職員59,550円
区分6行(一) 7級、これに相当する職員54,150円
区分7行(一) 6級、これに相当する職員43,350円
区分8行(一) 5級、これに相当する職員32,500円
区分9行(一) 4級、これに相当する職員27,100円
区分10行(一) 3級、これに相当する職員21,700円
区分11その他の職員(非常勤職員を含む。)0円
調整額区分表(人事院ホームページより引用)

ほとんどの人が、在職期間の終わりに行くほど高い俸給だと思いますので、例えば以下のような在職期間の場合

  • 4級に昇格してからの期間・・・36月
  • 3級に昇格してからの期間・・・48月
  • 2級以下の期間・・・72月

調整月額が高いところから60月なので、

  • 4級の期間は36月全部
  • 3級の期間は60月-36月(4級の期間)=24月を採用

→ 27,100×36月+21,700×24月=1,496,400円(*自己都合退職の場合はその半額)

なお、「自己都合」退職の場合は、勤続9年以下の場合は調整額の支給はなく、勤続10年以上24年以下の場合は調整額が半額となります。

  • 勤続「9年以下」の「自己都合」退職者は調整額が支給されない。
  • 勤続「10年以上24年以下」の「自己都合」退職者は調整額が半額になる。

退職手当の計算シミュレーションをしよう【勤続年数15年・自己都合退職の計算例あり】

手順①退職手当の計算に必要な数字を確認する

まずは、計算に必要な数字が、自分の場合いくつなのか、確認しましょう。

退職手当の計算に必要な数字
  1. 退職日の俸給月額
  2. 勤続年数
  3. 退職理由別・勤続期間別支給割合
  4. 各俸給ごとの期間(勤続10年以上の場合のみ)
まゆりんご
まゆりんご

上記の数字の確認方法を、ひとつずつ解説しますね!

1.退職日の俸給月額

基本額」の計算に必要な数字です。

「退職日の俸給月額」は、退職した時点いわゆる基本給のことです。

退職月の給与明細の基本給の額を確認しましょう。

「退職月の俸給月額」の例

基本給(月額): 335,300円

2.勤続年数

基本額」の計算に必要な「退職理由別・勤続期間別支給割合」を出すために数字です。

勤続年数は、ほぼ在職年数とイコールです。

「勤続年数」の例

在職年数15年 → 勤続年数も15年

ただし、上述の「勤続期間から控除する休職・休業期間」に該当するような休業期間がある場合は、その月数を控除します。

例えば、「育児休業」期間がある場合の例を考えてみましょう。

「勤続年数」の例
  • 在職年数15年 → 180月
  • 育児休業(第1子) 8月
  • 育児休業(第2子) 6月

*育児休業は1/3の期間を控除する。

*1月全て育児休業の月だけカウントする。

例:7/5~5/8が育児休業期間 → 8月~4月の9月を育児休業月数とカウント

  1. 控除する期間=(8月+6月)×1/3=4.66…月
  2. 勤続月数=180月-4.66月=175.34月
  3. 勤続年数=14年7月 →14年

*1年未満の端数は切捨て

3.退職理由別・勤続期間別支給割合

基本額」の計算に必要な数字です。

先に計算した「勤続年数」を、「退職理由別・勤続期間別支給割合」一覧表の左側の「自己都合」の欄にあてはめて、該当する数値(支給割合)を確認します。

退職理由別・勤続期間別支給割合の例
  • 退職理由:自己都合
  • 勤続年数:14年(育児休業期間控除後の年数)

あてはめると → 9.64224

4.各俸給ごとの期間

調整額」の計算に必要な数字です。

「調整額」は、勤続10年以上の場合のみ支給されますので、勤続10年に満たない場合は計算する必要はありません。

上述の「調整額区分表」の区分ごとに、期間を計算します。

また、この時の期間も、「勤続期間から控除する休職・休業期間」に該当するような休業期間がある場合は、その月数を控除します。

「各俸給ごとの期間」の例

在職期間を各区分ごとに分けた月数を出す。

  • 区分9(4級)の期間:33月
  • 区分10(3級)の期間:63月
  • 区分11 その他の期間:84月

育児休業などの休職・休業期間を控除する。

  • 区分9(4級) 33月-(6月×1/3)=31月

*第2子の育児休業を「4級」の期間で「6月」取得

  • 区分10(3級) 63月-(8月×1/3)=61.66…月

*第1子の育児休業を「3級」の期間で「8月」取得

  • 区分11 その他の期間 84月

「調整月額」が高い方から60月とる。

  • 区分9(4級) 31月
  • 区分10(3級) 29月(60月-31月)

手順②退職手当の計算式にあてはめる

手順①で用意した数字を、計算式にあてはめましょう。

手順①で「例」として計算した数字を使って計算してみます。

計算シミュレーション

<勤続15年(うち育児休業14月)、自己都合退職の場合>

(a)基本額=退職日の俸給月額×退職理由別・勤続期間別支給割合

 =335,300円×9.64224

 =3,233,043円

(b)調整額=(区分ごとの月数×各区分の調整月額)×1/2(注)

 =(27,100円×31月)+(21,700円×29月)

 =734,700円

退職手当 =(a)基本額+(b)調整額 (注)

 =3,233,043円+734,700円

 =3,967,743円

  • (注)勤続「9年以下」の「自己都合」退職者は調整額が支給されない
  • (注)勤続「10年以上24年以下」の「自己都合」退職者は調整額が半額になる。
まゆりんご
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退職手当の金額の計算シミュレーションができました!(ぱちぱち)

退職する前に、上記の計算シミュレーションで退職手当を計算して、退職後の生活設計を立てよう!

【実例】まゆりんごの場合の退職手当の計算シミュレーション結果

実は、「計算シミュレーション」で計算した例は、まゆりんごの場合の数字を使いました。

なので、まゆりんごの場合(勤続15年・自己都合退職)で、退職手当がいくらなのかシミュレーションした結果です。

実際に、退職手当が振り込まれた結果は・・・

まゆりんご
まゆりんご

実際の退職手当の金額は、計算シミュレーション結果とぴったり一致しました!

【紹介】退職金の計算サイト*ただし数字は自分で用意する必要あり

国家公務員の退職手当の金額を計算シミュレーションできるサイトもあります。

ただし、計算に使用する数字など(「退職日の俸給月額」、「勤続年数」、「各俸給ごとの期間」)は、当サイトと同じ計算方式で、あらかじめ用意しておく必要があります。

まゆりんご
まゆりんご

退職理由別・勤続期間別支給割合」を用意しなくてもよい(自動で設定してくれる)ので、少し楽ですね。

ちなみに、このサイトでもまゆりんごの場合で計算シミュレーションしてみたところ、全く同じ退職手当額になりましたので、内部的には同じ計算をしているようですね。

支払われるまでの流れと、支払われたら気を付けること

退職手当が支給されるまでの流れ【まゆりんごの場合】

まゆりんご
まゆりんご

まゆりんごは、2023年3月末日付けで退職!

退職手当が支払われるまでの流れはこんな感じでした。

2月下旬:人事異動の内示があり、まゆりんごの退職も周りが知るところとなる

3月上旬:人事から<退職手当関係の書類*後述①>が渡され、記入を求められる

4月上旬:<退職手当額の明細等*後述②>が自宅に届く

4月26日:退職手当が振り込まれる

①人事に提出した退職手当関係の書類

書類は所定の様式があり、人事から渡されました。

提出したのは以下の書類です。

人事に提出した退職手当関係の書類
  1. 退職手当の振込先金融機関を指定するもの
  2. 退職所得の需給に関する申告書 兼 退職所得申告書

2の「退職所得の需給に関する申告書 兼 退職所得申告書」の中で、「住所」「氏名」「勤続期間」のみ記入するよう、人事に指定されました。

それ以外の箇所は人事で記入の上、税務署に提出されたのだと思います。

この「退職所得の需給に関する申告書 兼 退職所得申告書」を税務署に提出することで、退職手当に対する所得税の非課税(上限額以上は課税)という対応が受けられるわけですね。

②退職手当額の明細等の関係書類(退職後に送付されたもの)

退職後に届いた、退職手当に関する書類は以下のようなものでした。

退職手当の関係書類(退職後に送付されたもの)
  1. 退職手当額の通知書
  2. 退職所得の源泉徴収票・特別徴収票
  3. 控除する住民税(4・5月分)の金額の明細

1の「退職手当額の通知書」には、シンプルに、退職手当の額だけが書いてありました。

2の「退職所得の源泉徴収票・特別徴収票」は、所得税の課税に関する書類です。

気を付けること①控除されているものを確認

所得税

退職手当も所得ですので、通常は所得税が課税されますが、勤続年数から計算した上限額までは非課税となります。

<勤続年数20年以下>

40万円 × 勤続年数(80万円に満たない場合には、80万円)

<勤続年数20年超>

800万円 + 70万円 × (勤続年数 – 20年)

<参考>退職金を受け取ったとき(退職所得) 国税庁

まゆりんご
まゆりんご

まゆりんごの場合は、勤続15年なので、

40万円×15年=600万円まで非課税となります。

この結果、受け取った退職手当は全額非課税でした!

非課税の上限額を確認し、所得税が控除されているか確認しよう!

住民税

住民税は、6月~5月が区切りとなっています。

原則として、退職日が1月1日〜5月31日である場合、5月分までの住民税を一括徴収(最終月の賃金や退職手当から控除)することが、給与支払者に義務付けられているようです。

このため、3月末で退職したまゆりんごの場合、退職手当から4・5月分の住民税が控除されていました。

まゆりんご
まゆりんご

・・・ということは、6月以降の住民税を自分で支払えばよいのだなっと。

気を付けること②退職後の住民税に注意

住民税の納税方法は、「特別徴収」「普通徴収」の2種類があります。

  • 特別徴収・・・給与支払者が納税者の給与から天引きして市町村に住民税を納付する方式
  • 普通徴収・・・納税者が自ら市町村に住民税を納付する方式

公務員時代は「特別徴収」なので、住民税を納付しているという認識があまりないものです。

退職後、給与所得者ではなくなった場合(フリーランス等)は「普通徴収」となり、住民税の納付書が自宅に届きます。

まゆりんご
まゆりんご

住民税って、公務員時代は毎月天引きされていたからあまり気にしてなかったけど、意外と高額でびっくり!!

フリーランス1年目だと稼ぎがまだまだなので、退職手当で支払うしかない・・・

前年の収入に対する課税なので、今年収入が少なくても払うしかないし・・・(涙)

  • 退職手当の一部は、「住民税の支払いに使う可能性あり」と考えておこう!
  • 退職手当や賃金から控除された額をもとに、金額の目安も想定しておこう!

まとめ:退職する前に、退職手当の計算シミュレーションをして、退職後の計画を立てよう!

国家公務員を辞める前に計算しておきたい「退職手当」について、計算方法や計算シミュレーション結果を紹介しました。

退職後の人生に重要なのは、お金だけじゃないけれど・・・

やっぱりお金は、「生活の安定」も「心の安定」も与えてくれる存在です。

そして、退職後のお金として最も頼りになるのが「退職手当」。

退職したい国家公務員の方も、今すぐの退職は考えていない国家公務員の方も、ぜひ計算シミュレーションをしてみてください。

「自己都合退職」にせよ、「定年退職」にせよ、いずれは退職する日がやってきます。退職手当の計算シミュレーションをすることで、みなさんの退職後の生活設計のシミュレーションにもつながったらうれしいです。

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